大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 平成7年(ワ)2624号 判決 1998年1月27日

原告

上田隆子

被告

羽根由紀

主文

一  被告は、原告に対し、金五三六万〇六五七円及びこれに対する平成五年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを七分し、その六を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金四一〇一万〇九九四円及びこれに対する平成五年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告が運転する普通乗用自動車が、原告運転の自転車に衝突し、原告が傷害を負った事故につき、原告が被告に対し、自賠法三条・民法七〇九条に基づき、損害賠償請求をした事案である。

一  争いのない事実等(証拠により比較的容易に認められる事実を含む。)

1  事故の発生

左記交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

日時 平成五年八月二五日午後二時五分頃

場所 大阪市東淀川区豊新五丁目一二番二六号先路上

事故車両一 普通乗用自動車(大阪五四ゆ九六六八)(以下「被告車両」という。)

右運転者 被告

右所有者 被告

事故車両二 足踏自転車(以下「原告車両」という。)

右運転者 原告

態様 原告車両に被告車両が衝突

2  原告の傷害等

原告は、本件事故の結果、腰部挫傷の傷害を受けた。

3  責任原因

被告は、被告車両を所有し、本件事故の際に自ら被告車両を運転して運行の用に供していた者であるから、自賠法三条により、原告に生じた損害を賠償する義務を負う(弁論の全趣旨)。

4  損害の填補

原告は、被告から、合計一〇五万七七五五円(治療費九六万四九九九円、装具費四万二七五六円、交通費等五万円)の支払を受けている。

二  争点

1  本件事故の態様

(原告の主張)

原告は、原告車両を運転して本件道路の西行車線の南端を東方から西方に向けて走行していた。被告は、被告車両を運転して本件道路の西行車線を、原告と同じく、東方から西方へ、時速約四〇キロメートル以上で走行していたところ、前方を十分に注視しなかった過失により、進行方向の左前方を走行していた原告の発見が遅れたため、被告車両を原告車両の後方に追突させて、その場に原告を転倒させたものである。

右のとおり、本件事故はもっぱら被告の過失によるものであって、原告に過失はない。

(被告の主張)

本件は、被告が、時速三〇キロメートルのスピードで、前方左右に注視して西進していたところ、左前方を自転車に乗って走行していた原告が、被告の進路前方約六メートルに迫った頃、右後方を確認することなく、突然、道路を横断しようとして、ハンドルを右に転把し、被告車両の前方に出てきたため、被告は急制動の措置をとったが間に合わず、衝突したために起きたものである。

2  原告の被った傷害及び後遺障害

(原告の主張)

原告は、本件事故により、腰部挫傷の傷害を負うとともに、その後、強度腰痛と右足・右手の痺れが発生した。原告は、病院に通院して治療・リハビリを受けたが、原告には、<1>頸部から上肢にかけての神経系統の損傷に由来する障害(右握力低下、右上腕二頭筋腱反射軽度亢進、頸を前屈しにくい等)、<2>第四腰椎と第五腰椎間の不安定性ないしすべり症に由来する障害(持続的な腰痛、足のこむらがえり、両下肢全体のしびれ等)、<3>仙髄神経から馬尾神経にかけての障害(尿失禁等)が残り、右後遺障害のため、原告は常時固定器具の着用を余儀なくされ、通常の日常生活や労働にも様々な支障が出るようになった。

原告に生じた後遺障害は、頸部から上肢や腰部から体幹、下肢にわたる神経系統の障害であり、日常生活動作、社会生活に相当程度の支障を生じているものであるから、自賠法施行令別表後遺障害別等級表九級一〇号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)に該当する。

(被告の主張)

<1>上肢のしびれや痙攣は当初の一時期にあったものにすぎず、頸部から上肢にかけての神経系統の損傷に由来する障害は認められない。<2>第四腰椎と第五腰椎間の不安定性は認められるが、すべり症は認められない。腰痛は右不安定性に由来するものと考えられるものの、一般に腰椎の不安定性は、脊椎分離症のない場合、椎間板の加齢による変性で椎間板が緩むことにより発生するものであり、本件の場合は、事故以前より存した不安定性が原因となって、事故後、症状があらわれたものと考えられる。<3>尿失禁は症状固定時までのカルテ等に記載されておらず、その存在は認められず、仮にこれがあったとしても、馬尾神経障害以外にも多くの原因が考えられ、仙髄神経から馬尾神経にかけての障害も認められない。

なお、原告の後遺障害は、自算会調査事務所において、非該当と認定されている。

3  損害額

(原告の主張)

(一) 治療費 九七万四四五九円

(二) 通院交通費 一二万八八四〇円

(三) 装具購入費用 四万二七五六円

(四) 事故証明申請費用 六〇〇円

(五) 逸失利益 三〇一九万九八四九円

(六) 通院慰謝料 一三八万円

(七) 後遺障害慰謝料 六四〇万円

(八) 弁護士費用 四〇〇万円

第三争点に対する判断(一部争いのない事実を含む。)

一  争点1について(本件事故の態様。)

1  前記争いのない事実、証拠(甲一、六、一三、一四、検甲一一、一二、原告本人。なお、これらの証拠についても後記措信しない部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

本件事故現場は、大阪市東淀川区豊新五丁目一二番二六号先路上である。本件事故現場付近では、東西方向の新幹線高架に沿ってその両脇にほぼ直線の道路が走り、同高架北側には東行車線(一車線)、南側には西行車線(一車線)となっており、東行車線の北測、西行車線の南側にはそれぞれ歩道が設置されている。本件事故現場付近の西行車線の幅員は、ゼブラゾーンを除くと約六メートルである。本件事故当時、西行車線の南端には違法駐車中の車両が多数存在したが、これらの外、同車線前方の見通しを妨げるものはなく、路面は乾燥しており、最高速度は時速三〇キロメートルとされていた。本件事故現場付近では、歩道が狭い上、違法駐車車両が多いので、車道部分を走行している自転車が多い。

原告(昭和二三年一一月五日生)は、平成五年八月二五日午後二時五分頃、原告車両に乗って、西行車線南端に違法駐車中の車両を避けるため、これらの車両のはみ出し具合に応じてそのすぐ北側脇を東から西に向かって進行していたが、進路前方に大きな自動車と小さな自動車が二列に重なって駐車している箇所があったため、これを避けるため、それまでよりもやや北側に膨らんで進行し始めた。ちょうどその頃、被告は、被告車両を運転し、原告車両の後方から時速三〇キロメートル程度の速度で進行してきたが、やや北側に膨らんだ原告車両を認め、衝突を避けるため、右にハンドルを切ったが間に合わず、被告車両の左側バンパー等が原告車両の後輪及び原告の右膝・右下腿に当たり、原告を尻もちをつく形で腰から路上に落下させた。

以上のとおり認められる。この点、被告は、左前方を自転車に乗って走行していた原告が、被告の進路前方約六メートルに迫った頃、右後方を確認することなく、突然、道路を横断しようとして、被告車両の前方に出てきたため、衝突したものであると主張し、被告本人尋問における供述及び甲第六号証における指示説明中にも右主張に沿う部分がある。しかしながら、被告の記憶には明確でない点が多い上、被告本人尋問における供述及び甲第六号証における指示説明によれば、右折中でほぼ横を向いている原告車両のサドル部分のやや後側に被告車両の左側バンパーが衝突したとされているが、右のような事故態様であれば、原告の身体は被告車両上に跳ね上げられるが、被告車両に轢過される可能性が高いと思われるところ、原告にはそのような傷害は存しないこと(甲九1ないし4)にかんがみると、被告本人尋問における供述及び甲第六号証における指示説明中、右認定に反する部分は措信しえない。他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

2  右認定事実によれば、本件事故は、主として、被告が、西行車線を走行するに際し、前方を注視しつつ進行すべき注意義務があるにもかかわらず、右注意義務を怠ったまま漫然と進行した過失のために起きたものであると認められる。

しかしながら、他面において、原告としても、二列に重なって駐車している車両の横を走行する以上、自らの安全を確保する見地から、後方から進行してくる車両の有無・動静を確認しつつ進行することが期待されたというべきであるから、原告に発生した全損害を被告に負担させるのは公平に反する。本件においては、前認定にかかる一切の事情を斟酌し、原告に生じた損害につき二割の過失相殺を行うのが相当である。

二  争点2について(原告の被った傷害及び後遺障害)

1  証拠(甲二、七、八1ないし3、九1ないし4、一三、一七1ないし18、一八、二一、二二、検二一ないし二三、乙四ないし六、証人吉田正和、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告は、本件事故当時、豊中市立原田小学校の講師として勤務していた。原告は、二学期の授業で使用する資料探しのため、本屋に向かう途中で本件事故に遭った。

原告は、本件事故当日の平成五年八月二五日、救急車で医誠会病院に運ばれ、同病院で、腰臀部打撲、右膝・右下腿打撲、左肘打撲の傷病名で診察を受けた。初診時、腰臀部痛、右膝・右下腿痛を訴えたが、X―P上、骨盤、右下腿、右膝、腰椎に異常は認められなかった。その後、同年九月九日まで通院し(実通院日数五日)、左膝のだるさ、右手首のひりひり感、左足の冷感、左母趾しびれ、親指のしびれ、左前腕の痙攣、一五分立位での背痛、坐位での腰痛等を訴えたが、左肘の可動域制限はなく、下肢反射異常もなく、特記すべき他覚的異常所見は認められなかった。同病院では、腰椎固定用バンドの装着、湿布及び内服薬の投与による治療が行われた。

(二) その後、原告は、平成五年九月一三日、浜田整形外科に転医して、腰部挫傷後の腰痛症、筋緊張症(両肩)と診断され、腰痛の外、左下肢がつったような感じを訴えたが、下肢伸展挙上テストは九〇度と正常であった。同年一〇月三一日まで通院したが(実通院日数一八日)、次第に症状が軽減したため、治療の一環としての水泳も許可された。同医院では、理学療法とモラビート軟膏塗布による治療が行われた。

(三) 原告は、平成五年一一月八日、曽根病院に転医し、平成六年八月八日まで通院した(実通院日数一五二日)。主訴は、腰痛であり、その外、時々こむらがえり、足のしびれがある、また、左下肢がだるい等を訴えた。診療記録上、腰椎の可動域制限の記載はない。平成五年一一月四日実施の下肢伸展挙上テスト左右八〇度、腱反射、知覚障害、筋力テストともに異常なしであった。平成六年三月七日実施の下肢伸展挙上テスト九〇度、ブラガード検査、バレーサインともに陰性、運動、知覚に異常なしであった。平成六年四月七日には神経学的に異常がないとされている。腰痛に対し、コルセット装着、腰椎牽引、ホットパック等種々の対症療法が続けられだ。また、第五腰椎と第一仙椎との関節に神経ブロックが行われたが、その効果はなかった。平成五年一一月一四日撮影の骨盤、両股関節レントゲン写真には、異常所見はなく、同日撮影の腰椎レントゲン写真では、特に異常はみられず、平成六年七月二七日撮影の腰椎前後屈時の側面像のレントゲン写真により、中間位、後屈位では異常はないが、前屈位にて第四腰椎・第五腰椎間の椎間板の後方が広がり、不安定性がみられる。平成六年七月二八日さわ病院に依頼した腰部MRI検査では、第五腰椎と仙椎間の椎間板に軽度の変性がみられるが椎間板の後方突出は認められない。

(四) 曽根病院の荒木医師は、平成六年八月八日をもって腰部挫傷につき症状が固定した旨の診断書を作成したが、同診断書によれば、自覚的には、長時間の立位、車の運転、中腰にて腰痛が出現するとされ、他覚症状及び検査結果としては、第四腰椎から第一仙椎の棘突起叩打痛著明、第五腰椎左椎内関節に圧痛著明、腰椎X―P前後屈側面にて第四腰椎と第五腰椎間の不安定性あり、MRIにて第五腰椎と第一仙椎間の椎間板の変性ありとされ、脊柱の荷重機能障害として、常時コルセット装用の必要性ありとされている。

(五) 自算会調査事務所は、原告の後遺障害につき等級非該当と判断した。

(六) 原告は、右症状固定後、平成八年四月一九日、星ケ丘厚生年金病院を受診し、朝起きると肩から指先がしびれる、腰が常に痛い、夜などに両下腿のこむら返りが起きる等と訴えた。深部腱反射四肢にて軽度亢進しており、バビンスキー反射はプラス、下肢伸展挙上テスト右八〇度、左九〇度、頭部CTに異常なし、足・膝クローヌスはマイナスであった。平成八年五月一〇日付の藤田医師の診断書には、持続的腰痛と右下肢第五腰椎領域にて知覚鈍麻を認める、平成八年四月二日施行の腰椎MRIにおいて、第四腰椎と第五腰椎間、第五腰椎と第一仙椎間の椎間板に変性を認めるが、神経圧迫は認めない、両上肢・下肢腱反射亢進にて、頸椎MRI施行したが、他覚的には異常は認めなかった、また、同病院神経科にて頭部CT施行したが、異常所見はないと診断されたという趣旨の記載がある。

(七) 原告は、平成八年五月二五日及び六月一七日に吉田正和医師の診断を受け、その際の自覚症状として、<1>持続的な腰痛、<2>しばしば発生する右足の疼痛、<3>夜半のこむら返りの頻発、<4>起床時に右上肢と両下肢全体にわたる「しびれる感じ」、<5>右手に持っているものをよく落とす、<6>頸から腰を前屈しにくい、<7>前屈困難かつ持続不能があるとされ、他覚症状として、<1>握力が右二二左二四で、右利きであるのに右測の方が弱い、<2>下肢伸展挙上テストは、右八〇度、左七〇度で挙上制限は軽度であるが、左右いずれも挙上に伴い腰部に強い痛みを生じる、<3>大腿神経伸張テストは、挙上制限はないが、やはり挙上に伴う腰部発痛がある、<4>第五腰椎とその両側方のN点に圧痛がある、<5>右上腕二頭筋腱反射は軽度亢進、右膝蓋腱及びアキレス腱反射は軽度低下、<6>脊柱股関節を含む体前屈は明らかに強く制限されている、<7>バビンスキー等の病的反射は認められない、<8>末梢血液検査では特に異常は認められないとされている。

その上で、吉田正和医師は、本件事故後における原告の医療記録を検討し、医誠会病院における左足の冷感、左母趾しびれ、親指のしびれ、左前腕の痙攣の訴えは受傷時に頸・腰部神経系への傷害があったことを示していること、曽根病院における平成六年七月二七日撮影の腰椎前後屈時の側面像のレントゲン写真から第四腰椎・第五腰椎間の不安定性が認められること、これが、星ケ丘厚生年金病院における平成八年五月一〇日撮影のレントゲン写真では、前後屈の制限が強くなっていて、前屈時には第四腰椎の第五腰椎に対する前方すべりが認められ、この部位に脊椎すべり症があると判断されること、第五腰椎と第一仙椎間の椎間板に軽度変性があること、頸椎や腰椎には変形性脊椎症の所見が認められるが、それらは年齢的に当然な程度の全般的な変性と考えてよく、それのみをもって何らかの症状をきたすことはないと判断されること、第四腰椎・第五腰椎間の不安定性が本件事故によって直接生じたものかどうかは断定できないけれども、事故後の疼痛持続と反射性筋群緊張の結果として脊椎の運動性が著しく低下したために運動時の力が不安定部に集中してかかることによるものと考えられ、本件事故による負傷の二次的影響と断定してよいこと、仮に第五腰椎・第一仙椎間の椎間板の軽度変性が本件事故前から存在していたとしても、次に述べる脊髄馬尾部神経繊維の損傷を増強した蓋然性が大きいこと、以上を総合的に考慮すると、受傷時に尻もちをつく形で脊柱に加わった外力が頸髄から出る神経根や腰髄から出る神経根を損傷していることも明らかではあるが、最も重視すべきは、馬尾神経に生じた炎症による神経繊維どうし及び神経繊維とその周辺組織との癒着等が原告の現在の後遺障害の大部分をもたらしていると判断されること、原告の有する障害は頸部から上肢や腰部から体幹・下肢にわたる神経系統の障害であり、日常生活動作・社会生活に相当程度の支障を生じているものであると評価されること、以上の意見を述べている。

(八) 浅野整形外科内科の浅野医師は、平成九年八月一一日付の診断書で、頭重感があり、ボンヤリし物忘れをよくする、右手で時々物を落とすことあり、腰部鈍痛、立つときに力が入らない、左下肢の倦怠感、時々尿失禁あり等と記載している。

以上のとおり認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

2  右事実を総合すれば、原告の後遺障害(平成六年八月八日に症状固定)は、主として馬尾症侯群と呼ばれているものであって、自賠責保険に用いられる後遺障害別等級表一二級一二号(局部に頑固な神経症状を残すもの)に該当するものというべきである。

この点、原告は、九級一〇号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)に該当する旨主張するが、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるべき事実を認めるに足りる証拠はなく、原告の右主張を採用することはできない。

三  争点3について(損害額)

1  過失相殺前の損害額

(一) 治療費 九七万四四五九円

原告は、本件事故による傷病の治療費として、九七万四四五九円を要したと認められる(甲四1、2、弁論の全趣旨)。

(二) 通院交通費 一二万五四〇〇円

原告は、通院交通費として、医誠会病院分として三四〇〇円、浜田整形外科分として六四八〇円、曽根病院分として一一万五五二〇円、合計一二万五四〇〇円を要したと認められる(前認定事実、弁論の全趣旨)。以上の外、原告は、大阪大学医学部附属病院への通院交通費も主張するが、本件事故と右通院との間の相当因果関係を認めるに足りる証拠はない。

(三) 装具購入費用 四万二七五六円

原告は、装具購入費用として、四万二七五六円を要したと認められる(弁論の全趣旨)。

(四) 事故証明申請費用 六〇〇円

原告は、事故証明申請費用として、六〇〇円を要したと認められる(甲三)。

(五) 逸失利益 三〇五万四八〇〇円

前認定事実によれば、原告の後遺障害は、自賠責保険に用いられる後遺障害別等級表一二級に該当し、原告は、右後遺障害により、その労働能力の一四パーセントを症状固定時(四五歳)から五年間喪失したものと認められる。

本件事故当時における原告の収入は、年額五〇〇万円程度であると認められる(弁論の全趣旨)。この点、原告は、平成五年一二月分から平成六年三月分までの給与及び特別手当の支給金額合計を四で除し、一二倍したものに、冬(平成五年一二月)の賞与額の二倍を足した金額をもって年収を算出しているが、一二月分から三月分までの給与及び特別手当の支給金額合計を四で除し、一二倍したものが賞与を除く年間の収入に相当するものとは直ちにはいえず、冬の賞与と夏の賞与とを同額なものとして算定することにも疑問の余地があるから、原告主張の算定方法を採ることはできない。

そこで、右金額を基礎として、新ホフマン式計算法により、年五分の割合による中間利息を控除して、後遺障害による逸失利益を算出すると、次の計算式のとおりとなる。

(計算式) 5,000,000×0.14×4.364=3,054,800

(六) 通院慰謝料 一〇〇万円

原告の被った傷害の程度、治療状況等の事情を考慮すると、右慰謝料は一〇〇万円が相当である。

(七) 後遺障害慰謝料 二二〇万円

原告の後遺障害の内容及び程度を考慮すると、右慰謝料は、二二〇万円が相当である。

2  過失相殺後の金額 五九一万八四一二円

以上掲げた原告の損害額の合計は、七三九万八〇一五円であるところ、前記一の次第でその二割を控除すると、五九一万八四一二円となる。

3  損害の填補分を控除後の金額 四八六万〇六五七円

前記争いのない事実等のとおり、原告は、本件事故に関し、被告から、合計一〇五万七七五五円の支払を受けているから、これを過失相殺後の損害金額五九一万八四一二円から控除すると、残額は四八六万〇六五七円となる。

4  弁護士費用 五〇万円

本件事故の態様、本件の審理経過、認容額等に照らし、被告に負担させるべき原告の弁護士費用は五〇万円を相当と認める。

5  まとめ

よって、原告の損害賠償請求権の元本金額は五三六万〇六五七円となる。

四  結論

以上の次第で、原告の被告に対する請求は、五三六万〇六五七円及びこれに対する本件不法行為日である平成五年八月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、主文のとおり判決する。

(裁判官 山口浩司)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例